Nobuo Sekine and his Phase of Nothingness, (1969/1970) installed at the Japan Pavilion, 35th Venice Biennale, 1970, photo: Yoriko Kushigemachi.
Broadcasts: Tribute to Nobuo Sekine (1942-2019)

本企画では、生前行われた関根へのインタビュー映像、キュレーターの吉竹美香によるナレーションと共に作家のこれまでの活動を紹介するショート·ドキュメンタリーを公開します。さらに、関根をよく知る同世代の「もの派」や「単色画」を代表する作家たちや、その活動初期に関根の作品から影響を受けたと語る後継の世代の作家たちから寄せられた追悼文を紹介いたします。

Production shot of Phase—Mother Earth (1968), 1st Kobe Suma Rikyū Park Contemporary Sculpture Exhibition, October 1–November 1968, photo: Susumu Koshimizu.
Installation view of Phase—Mother Earth (1968), 1st Kobe Suma Rikyū Park Contemporary Sculpture Exhibition, October 1–November 10, 1968, photo: Osamu Murai.

1968年秋、須磨離宮の広場に、巨大な円筒形の凹凸が出来た。とてつもない巨人が大地の一部を引っこ抜いて地上に置いたような、不思議な光景である。見上げれば雲一つない蒼い空が広がっていた。辺りをしばしうろついていると、何か途方もない神話的な出来事に出会ったようでゾクゾクしてくる。私は不意に閃いた。これが大地の在りようだと。なんと素晴らしい在りようだろう。眺めるほどに世界は出来事性に満ちていることが解る。いつか円筒は崩れ、何事もなかったように平らになり、そのうちまたへこんだり盛り上がったり。そうしてすべては日常の波に覆われ誰も気づかぬ世界になる―。今、眼前にひとりのアーティストの仕草により、大地が大地している。これが関根伸夫の「位相―大地」だ。

— 李禹煥

全文はこちらから: 日本語/英語

 
Installation view of Phase—Mother Earth (1968), 1st Kobe Suma Rikyū Park Contemporary Sculpture Exhibition, October 1–November 10, 1968, photo: Susumu Koshimizu.

関根伸夫と私は、旅先でよく会話を交わした。旅を共にする、というより同じ展覧会に共に出品する機会に恵まれたからであった。初めての旅は、言うまでもなく1968年神戸須磨離宮公園での「位相大地」制作に携わった数週間である。関根と私と吉田克朗と櫛下町順子と上原貴子と5人の合宿のような日々であった。この旅は、連日朝から穴を掘り土を積み上げる肉体労働と、国民宿舎の一室で夜毎の賑やかな会話の集積であったが、これは私達にとって奇蹟の体験といっても良いものであった。毎日の労働が果たしてどの様な成果を生み出すのか、五里霧中の始まりから日ごとに流した汗の分だけ少しずつ霧が晴れて行き、最後に爆発するような歓喜で「位相大地」の完成を見たのであったが、50年を経た今でも合宿した5人が共有し共感する安堵と信頼のもとになったと思う。

— 小清水漸

全文はこちらから: 日本語/英語

 

関根伸夫は、その作品群を通して共存や相互連関といった概念を我々に教えてくれた最も記憶に残る美術家であろう。大胆で強烈な物質性を湛えたその作品群は、周りの景色を写し出す鏡柱の上に置かれた巨大な石が持つ暴力的な力の間に発生するような、重量と無重力の間の緊張関係を生み出している···空間を無限の多様性を持った構造へと操作されうる単一の展性を持った実在として見れば、このような考えは、「ネガな大地」を視覚化するという思考の実験から生まれ、その後「もの派」のコンセプトの核における、知覚上の更新についての現象を生み出した関根の革新的なランド·アート作品「位相ー大地」(1968年) の根幹を成していると言えよう。

— 吉竹美香

全文はこちらから: 日本語/英語.

Narrated by Mika Yoshitake. Edited by August Blum. Artworks appear courtesy of the Nobuo Sekine Estate. All film footage by Robert Becraft.
Nobuo Sekine, Phase of Nothingness—Earth Circle, 1975
Bronze
5 15/16 x 35 7/16 x 35 7/16 inches
Nobuo Sekine, Stone and Neon, 1971/2011
Stone, fluorescent light, plastic
Stones: 22 7/8 x 18 7/8 x 37 inches; 26 3/8 x 24 x 37 3/4 inches; 22 7/8 x 22 1/2 x 37 3/4 inches
Unique Variant
Installation view of Stone and Neon, Galleria la Bertesca, Genoa, Italy, 1970, photographer unknown.

5月13日が関根の一周忌になる。彼の追悼文を書いていると、ほろ苦い気持ちになるのは未だに彼の死がもたらす喪失感が私にとって大きいからだ。しかしこの悲しみの中にも、「もの派」を代表する彼と出会えたという歓びがあり、そして彼が遺した作品によって私たちが永遠に彼と通じることができるという安らぎも感じるのである。

— 河鍾賢

全文はこちらから: 日本語/英語/韓国語.

 
Nobuo Sekine, Phase of Nothingness–Cloth and Stone, 1970/1994
Cloth, stone, rope, panel
76 1/4 x 102 inches canvas size
110 x 102 inches installed
Nobuo Sekine, Phase of Nothingness–Cloth and Stone, 1970/1994
Cloth, stone, rope, panel
28 5/8 x 35 7/8 x 6 inches
Sekine working, 1970, photographer unknown.

学生の頃に最も衝撃を受けた作品の一つが関根伸夫の「位相—大地」だった。なんと豪快で潔い作品であろう、と。もちろん1959年生まれの私は写真でしか観てはいないが、当時の旧態然とした日本の美術大学の授業に反抗的な態度をとっていた迷える青年にアートの醍醐味と勇気を与えてくれたことは確かだ。そして作家活動を始めるにあたってなんとかあの超弩級の「位相—大地」に挑まなくてはならないと心に決めた。

— 柳幸典

全文はこちらから: 日本語/英語

 
Nobuo Sekine, Phase–Sponge, 1968/2012
Sponge, steel plate
51 7/8 x 47 1/4 x 47 1/4 inches overall
Edition of 3
Nobuo Sekine, Phase No.10–2, 1968/2012
Wood, urethane paint, acrylic paint, F.R.P.
68 1/2 x 72 7/16 x 24 13/16 inches
Nobuo Sekine, Phase No.9, 1968/2013
Wood, urethane paint, acrylic paint, F.R.P.
70 7/8 x 35 1/2 x 19 11/16 inches
Nobuo Sekine, Phase No.5, 1968/2013
Wood, urethane paint, acrylic paint, F.R.P.
86 5/8 x 47 1/4 x 35 1/2 inches
"Nobuo Sekine: Sensibility of a Rock." © Louisiana Channel, Louisiana Museum of Modern Art, 2016
Installation view of Phase of Nothingness, Galleria La Bertesca, Genoa, Italy, 1970, photographer unknown.

関根伸夫の「位相大地」(1968年)という作品は、スケールの大きい良い作品であった。どうしてあのようなものをつくることになったか、いちいちせんさくしてもしょうがないことであるが、〈作品〉が眼前にあるかどうかが、どんな場合でも先行するのはいいことである。キッカケの大もとはやはり斎藤義重の教えを受けていたことがはじまりであると思われる。それは、わたしなども同様であるが、斎藤さんの時代の動向を見る力は、若い作家にとって、荒海の中の光であった。その光を見れるかどうかは、そばにいる者に才能があるかどうかであるが、その意味で、関根伸夫は、行くべき方向をしっかり見ていたとおもわれる。

— 菅 木志雄

全文はこちらから: 日本語/英語

 
Nobuo Sekine, Progetto, 1971
Xerox copy, ink, pencil
28 3/4 x 39 3/4 inches
35 x 46 1/4 inches framed
Nobuo Sekine, Progetto, 1971
Xerox copy, ink, pencil
28 1/4 x 39 3/4 inches
35 x 46 1/4 inches framed
Installation view of Phase of Nothingness—Black, Kunsthalle Düsseldorf, Germany, 1978, photographer unknown.
Installation view, Phase of Nothingness—Oil Clay, Tokyo Gallery, 1969.
Nobuo Sekine with Phase of Nothingness—Oil Clay, Tokyo, 1969, photo: Kō Nakajima.

 

「空相―油土」の発表時1969年にはもちろん実見しておらず、学生時代1977~78年頃に雑誌で見ただけである。ただ、その時に異様な印象を持った事だけは記憶している。代表作の「位相―大地」がある意味、論理的な整合性の印象を私に与えたのと異なり、ぶっきらぼうな物質的存在の有り様が印象深かった。... 関根氏の「空相―油土」は、そのようなもの派特有の“配慮なき配慮”が全く感じられないまでに、油土の物質性が強調されている。そもそも油土は、小学校での美術の授業で一般的に使われなじみがある。そうであるが故に、その量塊と投げ出されたかのような扱いに衝撃を受けたのである。

— 中村一美

全文はこちらから: 日本語/英語

 
Nobuo Sekine, Progetto, 1971
Xerox copy, ink, pencil
39 3/4 x 28 3/4 inches
46 1/4 x 35 inches framed
Nobuo Sekine, Progetto, 1971
Xerox copy, ink, pencil
39 3/4 x 28 3/4 inches
46 1/4 x 35 inches framed
Sekine outside of Galleria La Bertesca, Genoa, Italy, 1970, photo: Yoriko Kushigemachi.
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