Blum & Poe (東京) は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするアナ・パークの日本初となる個展を開催いたします。本展は、当ギャラリーでは2度目となる同作家の展覧会となります。
幼い頃に韓国から米ユタ州へと移住し、そこで育ったアナ・パークは、外部者の視点から物事を客観的に見るという経験をしてきたと言います。幼い頃からのこのような眼差しについての学びは、現在のパークが生み出す作品にも大きな影響を与えてきました。パークが取り組んできた木炭ドローイングは、抽象と具象のはざまを揺れながら、窃視者としての距離を保ちつつ、反復するフォーマット、アメリカの定番的なモチーフ、社会的交流におけるパフォーマティビティ (行為遂行性) といった要素を巧みに用い拡大化させた人間の条件の様相を見せています。
スケッチから始まるその制作プロセスにおいて、作家はインターネットで見つけたストックイメージを主な参照とする広範囲に及ぶ個人的なイメージ・アーカイブを用いてイマジナリーな場面を発展させ、明らかにしていきます。多層的イメージを重ねイメージを暴き出すと同時に覆い隠していくことで、普遍的によく知られたシーンやシンボルは次第に複雑化した描写へと成り変わります。その作品群に見られる、薄汚れた顔、レスリング的なイメージを持った身体、フリルの布、スピード感のあるストロークといったせわしないビジョンの存在は、強烈なエネルギーを持ったグラフィックノベルやラディカルな断片化を試みたキュビズムの視覚言語を我々に思い起こさせます。
二枚のパネルで構成された巨大なドローイング作品「Mind Over Matter」(2021) では、登場人物の落下という行為を主題とした壮大な物語の中に西洋的ジャンルを見事に成立させています。そこでは、静止画の中で捉えられたアメリカの移民排斥主義的シンボルの追放や男性らしさについての神話といった要素が、なす術もなく落下していくカウボーイの様子とともに描かれていると同時に、ぼんやりとした木炭のストロークを伴ったコンポジションの中には突如として現れる視覚的効果がもたらす暴力性や衝撃が反響しています。一方で、「Hello, Stranger」(2021) に登場するのは、こちらを向き、髪をカールさせながら「お出かけ」支度の儀式にいそしむ女性の姿です。その人物像を、様々な形態や動きがうごめく疾風、女性の頭や身体から発生したような渦巻状のカオスな形態の群れ、不協和音を告げる不安や不安定さを視覚化したイメージが取り囲み、我々の目は別人格へスイッチしているかのような変化の最中にいる女性の姿を捉えます。そこには、同時代的経験についての社会的コメントや、劇場としての世界全体についての記述や、世界に満ち満ちた自意識的な振る舞いが作家によって描写されています。
アナ・パーク (1996年韓国テグ生まれ)
現在、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動。プラット・インスティテュート (ニューヨーク・ブルックリン) を卒業後、ニューヨーク・アカデミー・オブ・アートにて美術学修士号を取得。これまでに、ザ・ドローイング・センター「100 Drawings from Now」(2020年、ニューヨーク)、パブリック・アート・ファンド「Art on the Grid」、フラッグ・アート・ファウンデーション「Drawn Together Again」(共に2019年、ニューヨーク) といったグループ展に参加。また、2019年にはAXA Art Prize最優秀賞並びにStrokes of Genius 11「Finding Beauty」大賞を受賞。
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