Part II – Parergon: Japanese Art of the 1980s and 1990s
キュレーション: 吉竹美香
April 6May 19, 2019

パレルゴン
1980年代、90年代の日本の美術   

キュレーター吉竹美香
BLUM & POE (ロサンゼルス) 

2: 201946 () - 5 19 ()
オープンニング·レセプション  
46 () 18:00-20:00

ライブ·パフォーマンス: EYE

 オープニング·レセプションに際しては、そのバンド形態を多様に変化させながら活動してきたオルタナティブ·バンド、BOREDOMSを結成し、そのフロントマンとして活動してきたEYEによるラップトップ、コンタクトマイク、光センサーを用いたパフォーマンスが開催されます。

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BLUM & POE (ロサンゼルス) は、吉⽵美⾹のキュレーションのもと、「パレルゴン」と題する1980 年代、90 年代の⽇本美術を検証する展覧会のパート2 を開催いたします。2 会期にわたり、当ギャラリー及び関連会場で⾏われる本展では、レトロ·フューチャリズム(懐古的未来)、ノワール、シミュレーショニズム、国境の探求などといった複数のテーマに焦点を当て、ペインティング、⽴体作品、パフォーマンス、ノイズ·ミュージック、映像作品、写真作品といった多岐にわたるジャンルによる作品群を通して、EYE、岡﨑乾⼆郎、森万⾥⼦、中原浩⼤、中村政⼈、柳幸典、ヤノベケンジ、横尾忠則をはじめとする総勢25 名の作家が参加いたします。本展に合わせ、数々の作家による当時についての証⾔や、本展キュレーターの吉⽵、「Japanoise: Music at the Edge of Circulation」(デューク⼤学出版、2013 年) の著者であるデヴィッド·ノヴァク⽒による新しい論考を取り⼊れた図録も刊⾏予定となっています。

「パレルゴン」パート2 では、ノイズ、サウンド (実験⾳楽)、エレクトロ·アコースティック·ミュージックといったジャンルを切り開いてきた作家たちによるライブと共に、当時を代表する極めて独創的なインスタレーションや⽴体作品を紹介し、パート1 で取り上げたテーマをさらに拡張し展開していきます。ヤノベケンジによる「Tanking Machine (Rebirth) 」(2019 年)は、ダーク·ユーモアを交えた、インタラクティブ(体験型)なSF 的様相を呈した作品です。終わることない核への脅威に⾯した現実を懐古的未来のナラティブで表現した同作品は、1989 年に初めて発表されました。また、様々な素材を⽤い、多くの作家たちに影響を与えてきた中原浩⼤による、奇妙な⼤理⽯製の⽴像型の彫刻作品や、頭上から吊り下がるビビッドな⾊彩を持った球体状の作品は、「ポスト·メディウム」下での彫刻を取り巻く状況についてのユーモラスな⾒解と⾔えるでしょう。岡崎乾⼆郎は、美術作家として、また批評家として、建築論、⽂学論、絵画、レリーフ、彫刻、ロボティクス、ダンスといった横断的なメディウムや思考を⾏き来しながら、その広範な知識や理論と共に実践を⾏ってきました。柳幸典は、⽇本と⽶国で学んだ後、⼤規模でサイト·スペシフィックなインスタレーションの制作を始めるようになります。その作品群を通して、象徴的なイメージを記号学のシステムによって表すことで、国境や境界に関するポリティクスを掘り下げていく制度批判の取り組みを継続して⾏なってきました。さらには、1960 年代からサイケデリックな作⾵で知られグラフィック·デザイナーとして活躍した横尾忠則は、1981 年の画家宣⾔後、美術史への参照といった⼿法を再考した、ノワール調の具象画、コマ割りされたキャンバスに登場するダダイストたちの肖像画といったペインティング作品や、陶板を素材として⽤いた霊媒をモチーフに捉えたユニークな作品も展⽰されます。そして、⽇本におけるノイズ·ミュージックシーンにおける実験的精神や東京のアンダーグラウンドの空気を伝える写真、雑誌、アナログ·レコードから成る膨⼤なアーカイヴは、本展に合わせて開催されるライヴ·パフォーマンスを、歴史的⽂脈から多⾓的に紹介するものです。

本展のタイトルである「パレルゴン」という語は、80 年代に若い世代作家を中⼼に⽣まれたニュー·ウェーブの動向と結びつき、多くの⽇本⼈作家たちを紹介してきた東京に存在した画廊、ギャラリー·パレルゴン (1981 - 1987 年) にも参照しています。その名称は、ジャック·デリダにより1979 年に発表され、美術作品の「枠組み」についての疑問を投げかけた論考のタイトル「パレルゴン」に由来しており、その⾔説は、当時様々な作家や批評家たちに影響を与えました。

本展では、今⽇の⽇本の現代美術を把握し、理解を深めていく上で重要となるこの20 年間 (1980-1999 年) に⽣み出されてきた独特な作品群が⼀堂に会することとなります。1970 年代に「もの派」によって展開されたオブジェやその関係性についてのコンセプチュアルな再考の後に続くこの時代には、インスタレーション、パフォーマンス、また実験的な多ジャンルでの実践を通して探求を⾏ってきた⾔語や媒体を⽤いた作家たちの新しい批判的試みが花開きました。

アメリカとヨーロッパでは、いわゆる「ピクチャーズ·ジェネレーション」と呼ばれる作家たちによって特徴付けられたシュミラークルや脱構築といったポスト·モダン的な美学思考を背景に表現主義へと回帰する中、⽇本ではバブル経済の発展と崩壊によってもたらされた⾮常に特異的な社会的、地政的状況を背景として、消費主義社会といった時代性がはっきりと現われるようになります。作家たちは、既存の美術を乗り越えていくような美術⾔語を模索し始め、実験的な電⼦⾳楽、コンセプチュアルな写真作品、消費⽂化からの流⽤といった多種多様な表現や媒体によって、アンダーグラウンドの⽂脈にあるサブカルチャーの要素を⾃⾝の美術的領域と融合していくような試みも⾏われていくようになりました。また、形態、空間、⾔語の新たな抒情性から表出されるような歴史上の前衛芸術やモダニズム的な美学の内在化を打ち出していく作家たちも現れるようになります。

ポスト昭和のこの時代には、ジェンダーポリティクス、核戦争、ナショナリズムへの批判といったテーマが、特に関⻄地⽅を拠点として活動する作家たちを中⼼に取り上げられるようになります。⼀⽅で、90 年代半ばに⾒られるアーティスト集団の登場や、戦後⽇本の前衛美術を位置付け直すユーモラスなパフォーマンスやコンセプチュアルな作⾵も⾒られるようになります。このような活動は、ネオ·ポップと呼ばれる世代の爆発的な台頭の先駆けとなるような、特異性を持った「幼稚化する資本主義」から⽣み出されたサブカルチャーの影響を反映していると⾔えるでしょう。

「パレルゴン」展は、当ギャラリー開廊25 年の節⽬の年に開催されます。本展は、代表であるティム·ブラムが、その数年間の東京滞在の中で⽇本の美術シーンに関わってきた、まさに本展のテーマと同時代である、90 年代初期から始まった当ギャラリーの歴史について⾔及し、我々が⻑年紹介してきた⽇本美術の歴史的な流れについての架け橋となるものです。本展は、「もの派」という芸術動向の台頭と、村上隆や奈良美智といった作家で知られる「ネオ·ポップ」と呼ばれた世代の間に横たわる⽇本美術における重要な数⼗年間について掘り下げていく試みと⾔えます。

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Part I

荒木経惟
畠山直哉 
池田亮司
石川順惠
宮島達男 
森山大道 
中村一美
大竹伸朗 
小沢剛
高梨豊 
椿昇 
柳幸典 

Part II

EYE
灰野敬二
木村 友紀
森万里子
中原浩大
中村政人 
岡崎乾二郎
大友良英
佐藤ジン
渡辺克己 
柳幸典
ヤノベケンジ
横尾忠則
YoshimiO / SAICOBAB

Nonaka-Hill

畠山直哉 
石川順惠 
角永和夫 
森山大道 
中村一美 
築地仁

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パブリック・プログラム 

EYE
日時: 4月6日 (土) 
会場: BLUM & POE (ロサンゼルス)

出展作家によるトーク
岡崎乾二郎、柳幸典、ヤノベケンジ (出展作家)、吉竹美香 (キュレーター)
日時: 4月7日 (日) 14:00-16:00
会場: Japan House

灰野敬二
日時: 4月7日 (日) 20:00-
会場: Zebulon

会場: 大友良英とデヴィッド・ノヴァクによるトーク
日時: 5月4日 (土) 14:00-16:00
会場: BLUM & POE (ロサンゼルス)

大友良英、Saicobab
日時: 5月4日 (土) 20:00-
会場: Zebulon  (ロサンゼルス)

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本展は、当ギャラリーの特別企画展を担当するゲスト·キュレーターである吉⽵美⾹によるキュレーションとなります。吉⽵は、戦後の⽇本美術についての幅広い学識を背景に、後に1980、90 年代において展開されていった様々な分野やサブカルチャーについての探求への流れを切り開いていくこととなった、1960、70 年代より⽣まれた⽇本美術の重要な変遷についての検証を続けてきました。その試みは、彼⼥のキュレーターとしてのポジションをユニークなものにしています。ロサンゼルス現代美術館で開催され、その後国際的な巡回展となった「© MURAKAMI」 (2007-09年) 展における企画コーディネーター、グッゲンハイム美術館 (ニューヨーク) で開催された「Lee Ufan: Marking Infinity」(2011 年) 展における、キュレートリアル·リエゾン、 ワシントンD.C.にあるハーシュホーン美術館と彫刻庭園から始まり北⽶の6 会場を巡回した「Yayoi Kusama: Infinity Mirrors」(2017-19 年) 展における企画キュレーターとして、様々な美術機関で⼤規模な展覧会に携わってきた経験は、吉⽵のキュレーションによる多様な領域間の接続を可能にしてきました。2012 年には、BLUM & POE (ロサンゼルス) で開催された「太陽へのレクイエム: もの派の美術」をキュレーションした功績で、AICA-USA (国際美術評論家連盟アメリカ⽀部) より表彰されています。

吉⽵は、2011 年より2018 年の間、ハーシュホーン美術館と彫刻庭園に所属し、キュレーターとして活躍していました。同館では、「Yayoi Kusama: Infinity Mirrors」展 (2017-19年)、「Shana Lutker: Le 'NEW' Monocle, Chapters 1-3」展 (2015-16 年)、「Le Onde: Waves of Italian Influence」展 (2015 年)、Speculative Forms 展 (2014-15 年)、「Days of Endless Time」展 (Kelly Gordon との共同企画、2014-15 年) 、「Gravity's Edge 」展 (2014 年) 、「Sitebound:

Photography from the Collection」展 (2014 年)、「Dark Matters」展 (Melissa Ho との共同企画、2012 年)、「Ai Weiwei: According to What?」展 (2012-13 年) といった数々の作品の企画やコーディネートに携わっています。また、現在は、ロサンゼルス·カウンティ美術館とニューヨーク植物園で開催予定の2 つの⼤規模な回顧展のゲスト·キュレーターを務めています。また、吉⽵は、カリフォルニア⼤学ロサンゼルス校で、美術史における修⼠課程ならびに博⼠課程を修了しました。当ギャラリーで2012 年に開催された「太陽へのレクイエム: もの派の美術」展やその論考は、⾃⾝の博⼠論⽂を元に展開されたものです。2014 年には、アートペース (テキサス州サンアントニオ) での国際的なアーティスト·イン·レジデンス企画に、ゲスト·キュレーターとして参加しています。また、テキサス州ダラスのザ·ウエアハウスを会場とした「Topologies」展 (2018 年5 ⽉14 ⽇ -2019 年4 ⽉13 ⽇) でもキュレーションを⾏いました。