Yukie Ishikawa
September 1October 20, 2018

石川順惠


BLUM & POE (東京)

2018年9月1日 – 10月20日

オープニング・レセプション: 2018年9月1日 (土) 18:00 – 20:00 

BLUM & POEでは、石川順惠による展覧会を開催いたします。当ギャラリーでは初の個展開催となる本展では、30年にわたる作家の取り組みを一連の作品群と共に紹介いたします。

石川の活動は、アメリカやヨーロッパ各地で、新しい美術の可能性を模索したネオ・エクスプレッショニズム (新表現主義) の動向が席巻した1980年代後半、日本におけるニュー・ペインティングの台頭と共に、始まります。それは、日本においても、バブル経済を時代背景とし、デザインや消費文化といった時代性を反映しながら、既存の美術を乗り越えていくようなシミュラークルやアポロプリエーションといった新しい美術手法が模索された時代でした。このような背景の中で展開されてきた石川の実践には、モダニズム絵画の歴史や、ミニマル・アートに見られるモノクローム的な空間に対する意識的な応答が明確に見られます。

キャンバス上で拡大され、トレースされ、写し出されたコンポジションは、雑誌、広告、新聞、書籍といった印刷物から作家が見つけた日常的なイメージをもとに取り入れられています。トレースされた形態は、一見すると二次元的な平面に収束しているように見えますが、作家の視点を通した画面の中で、見事に三次元的な空間が視覚的に再構成されています。石川は、元のイメージが持つ固有性を曖昧にするように、抽象性を慎重に構成し、彩色を施すことで、「そのような事物が属する三次元的空間とは別種の絵画的な空間」を生み出すことについての探求を行なってきました。また、いくつかの作品では、樹木や岩、そして山といったモチーフに、生命力や律動感をその濃淡のうちに宿すような効果を (意味的にも、表象的にも) 与えるものとして用いられてきた、9世紀の中国で生まれた点苔という水墨画の技法が応用されています。このようにして、作家のアプローチは、伝統的な水墨山水画の技法を特徴的に用いながらも、日本の広告文化における独特な集合的無意識を流用するといった手法を携えた、モダニズム的抽象画を脱構築化するポストモダン的方法論を取っていると言えるでしょう。

さらに、本展では、非常に複雑で入り組んだ構成から成る、日本語で「非永続性」を意味する<Impermanence>と称する現在まで取り組んでいるシリーズを紹介いたします。今回発表する作品は、スタジオの窓から見える風景の移ろいを前にした瞑想的な状況から着想を受けて、2012年に完成されたものです。本作群では、未完成のペインティングを加筆し、すでに完成したかに見える旧作を再構成することで、これまでの作品とは異なる絵画構造を打ち出していきます。同作品群において、真っ新なキャンバスに向かうことを放棄する代わりに、砂を混ぜ質感を増した絵の具や点苔の技法を複合的に駆使し、レイヤーやグリッド、線を新たに加えていくことで、作家は「与えられた条件」に向かっています。作家にとって、加筆という行為は、棄捐や破壊、否定を意図するものではなく、表面に加えられた色彩や、描かれた形式によって新しい絵画的な意味づけを付与していくことを表しているのです。画面の中では、重ねられたレイヤーと下のレイヤーの構成からは、複層的な関係性が生まれています。同様に、ストライプ状の色の組み合わせは、オプティカルな混色をもたらしています。同作における自身の創作の動機について、「画面内の様々な構成要素が、独立的な存在としてありながら、様々な場所で、他の要素と多様な、独特な関係を持つ絵画を描きたいと思っている」と作家は述べています。 

石川順惠
1961年東京生まれ。現在、埼玉県日高市を拠点として活動。1983年武蔵野美術大学油絵学科卒業。80年代末から頻繁に個展を開催し、数多くの主要なグループ展にも参加している。主なグループ展に「VOCA展」上野の森美術館 (東京、1995年・1999年)、「再考:近代日本の絵画-美意識の形成と展開」東京都現代美術館・東京藝術大学大学美術館 (2004年)、「絵画の力 − 今日の絵画 近年の新収蔵作品を中心として」いわき市立美術館 (福島、2005年)、「プライマリー・フィールド 美術の現在 − 七つの<場>との対話」神奈川県立近代美術館葉山館 (2007年)、「ミニマル/ポストミニマル 1970年代以降の絵画と彫刻」宇都宮美術館 (栃木、2013年) などが挙げられる。その作品群は、広島市現代美術館、いわき市立美術館、神奈川県立近代美術館、国立国際美術館、セゾン現代美術館、宇都宮美術館といった美術館で所蔵されている。